福井 健策

定価: ¥ 756
販売価格: ¥ 756
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発売日: 2010-01-15
発売元: 集英社
発送可能時期: 在庫あり。
ネット時代に「情報の独占制度」はどうあるべきか
情報は「非競合性」(何人が使っても減らない)、「非排除性」(占有管理がしにくい=誰かが使うことを止めにくい)という性質を有するので、「誰でも自由に情報を利用できる」という大原則が支配する。また、情報の理由な流通をできるだけ人為的に妨げないのが民主主義の基本的なルールである。この考え方が「表現の自由」を支える。
しかし、自分が生み出した作品をコントロールできることは創作者の自然な要求であり、利用から対価を得られることで更なる創作の原動力になるとう「創作振興」の面で著作権などの「情報の独占を許す制度」がある。
というのが、この本の基本的な前提で、関係者の利害を総合的に調整する弁護士の立場から、制度の現状と未来への展望を豊富な事例で考察してある。知的財産権に関する実務というよりも、思想的な面に焦点が当たった本です。電子図書館などの「アーカイヴィング」にも一章が当てられています。
今後の著作権を考えるうえで必読の一冊
デジタルメディアの進化に著作権がついてこれず、
それにより問題が複雑化している現状と今後の方向性についてまとまっている。
ある法制度が正当化されるのは、その社会的なメリットが、
その制度による社会的なデメリットを(コスト)を上回るときだけ、
という「社会的費用」(P128)の考えというのは、明確な視点だと思う。
今後の著作権の方向性として、
1.著作権リフォーム論
A作品登録制…著作者へのサーチコスト等の取引コストは減るが、ベルヌ条約に抵触する
B報酬請求権化…使用は誰でも可能で、かつ必ず費用を支払うが、独占権が無実化する
C日本版フェアユース…私的複製以外の使用範囲を広げ新しいビジネスにつなげるが、
海賊版への懸念など、現状のコンテンツホルダーからは批判的
2.DRMの強化
法整備が追いつかない以上、技術的な制限により、権利者の保護を行うが、
強すぎるDRMはユーザーとしては不利益になる
3.パブリックライセンス
クリエティヴ・コモンズを例とした、著作者が一部の権利を自分の意志として、
オープンにするか否かを表示したマークを示す、世間向けのライセンス。
とさまざまあり、結論としては明確ではない。
個人的には政府が米国寄りの著作権の改定よりも、
権利者のライセンス保護と収入の分配を行う一括管理データベースのために、
金と人を割いてくれるほうが懸命な判断だと思う。
問題点を把握できる
以前に読んだ著作権に関する本では、新聞記事の切り抜きの回覧はよいがコピーしての回覧はよくないなど、主として印刷物に関する記述が多かったと記憶しています。
ところが時代は変わるもので、インターネットの普及により、日本の情報の流通量は10年で530倍になったそうです。そういった環境の変化やそれにともなう訴訟などを紹介し、デジタル技術に法律が追いつかない現状を上手く伝えてくれる本です。ネット社会の拡大により、国内の法律だけでなく、国際的な条約や他国の法律との整合性までを配慮した規定を作るのはまず無理なことでしょう。ベルヌ条約の改定が望まれます。
いずれにしても問題点は把握できるが、結論はまだ見えない歯がゆさを感じさせる本です。
P.129の「日本では新しい法制度ができるときは、ややもするとムードに流された"空気"の議論がされがちです」との指摘も別途掘り下げていただきたいテーマと感じました。

